2026年大ヒット映画『王と暮らす男』のロケ地巡り:ヨンウォルとゴリョンへの旅

はじめに
2026年の韓国映画界で最大の話題作といえば、間違いなく『王と暮らす男(왕과 사는 남자)』ですよね。名優ユ・ヘジンと、圧倒的な演技力を見せたパク・ジフンが主演を務め、歴史の波に翻弄された悲劇の若き王・端宗(タンジョン)の物語を描いたこの作品は、観客の涙と感動を誘いました。しかし、この映画がもたらした影響はスクリーンの中だけにとどまりません。今、韓国ではこの映画の舞台となった江原特別自治道の「ヨンウォル(寧越)」と、慶尚北道の「ゴリョン(高霊)」を巡る「ロケ地巡り(聖地巡礼)」が大ブームになっているんです。
ヨンウォルの宿泊施設の検索数は、映画公開後になんと190%も急増しました。映画のセットとして作られた架空の場所ではなく、実際に端宗が流刑され、最期を遂げた歴史的な実在の場所であることが、多くの人々の心を惹きつけています。ソウルの賑やかなカフェやショッピングも楽しいですが、たまには深く美しい自然と、切ない歴史が交差する地方都市への旅はいかがですか?今回は、韓国リピーターの方にもぜひおすすめしたい、ヨンウォルとゴリョンを巡るディープな韓国旅行の魅力をご紹介します。
日本との比較で見えてくること
日本の歴史ドラマや大河ドラマのロケ地巡りというと、京都や鎌倉、あるいは武将ゆかりの立派な城跡を訪れることが多いですよね。華やかな武家文化や、激しい合戦の舞台となった場所が観光のメインになりがちです。しかし、韓国の歴史ドラマにおけるロケ地巡り、特に今回のヨンウォルのような場所は、少し趣が異なります。
韓国の歴史観光において非常に重要なキーワードが「恨(ハン)」という感情です。これは単なる「恨み」ではなく、悲哀や無念、そしてそれを乗り越えようとする深い心の動きを指します。端宗はわずか12歳で王位に就きながら、叔父である世祖によってその座を奪われ、陸の孤島とも呼ばれるヨンウォルの清冷浦(チョンニョンポ)に流刑されました。そして17歳という若さで賜死(王の命令で毒を飲んで死ぬこと)させられたのです。
韓国の人々がヨンウォルを訪れるのは、単に「映画で見たきれいな景色だから」という理由だけではありません。不条理な運命に翻弄された若き王への哀悼の意を表し、その「恨」の感情に共鳴するため、まるで巡礼のように訪れるのです。日本の「判官びいき」(源義経など、悲劇の英雄に同情する心理)に似ている部分もありますが、より静かで、精神的な深いつながりを感じる旅と言えるでしょう。映画を通じてこの歴史を知った若い世代(Z世代)から、昔から歴史を知る年配の世代まで、幅広い層が同じ場所で静かに涙する姿は、韓国ならではの光景です。
実際に体験するには
では、実際に映画の感動を胸にロケ地を訪れるための、具体的な見どころと実用的なアドバイスをご紹介します。
1. 陸の孤島「清冷浦(チョンニョンポ)」へのフェリー
映画の中で最も印象的だった、端宗が孤独な日々を過ごした清冷浦。ここは三方を深い川に囲まれ、背後には険しい崖がそびえ立つ、まさに「陸の孤島」です。現在もここへ行くには短い距離ですがフェリーに乗る必要があります。 【実用アドバイス】 映画の大ヒットにより、週末はこの短いフェリーに乗るためになんと最大3時間待ちになることも!週末に行くなら朝一番(午前9時頃)を狙うか、可能であれば平日の火曜日や水曜日に訪れることを強くおすすめします。島内には樹齢600年を超える巨大な松の木「観音松」があり、王の悲しみを見守り続けたと言われています。
2. 世界文化遺産「荘陵(チャンヌン)」
清冷浦からほど近い場所にある荘陵は、端宗のお墓であり、ユネスコ世界文化遺産にも登録されています。ソウル近郊にある他の王陵の華やかさとは対照的に、とても静かで質素な佇まいが涙を誘います。映画の中で描かれた、王の遺体を命がけで収拾した役人・厳興道(オム・フンド)の勇気に思いを馳せながら、ゆっくりと散策してみてください。
3. 絶景の「立石(ソンドル)」
ヨンウォルの雄大な自然を象徴するのが、川沿いにそびえ立つ高さ70メートルの巨大な岩「立石(ソンドル)」です。映画の壮大なドローン撮影でも使用されたこの場所は、展望台からの景色が息をのむほど美しく、端宗がどれほど深く険しい山奥に閉じ込められていたのかを視覚的に実感できます。
4. 緊迫の政治シーンの舞台「ゴリョン」
ヨンウォルが流刑の地であるなら、ゴリョンは物語の始まり、つまり激しい宮廷内の権力闘争が描かれた場所です。慶尚北道に位置するゴリョンには、伝統的な役所の建物(官衙)がきれいに保存されており、ユ・ヘジン演じる役人が張り詰めた演技を披露した中庭を実際に歩くことができます。
5. ヨンウォルへのアクセスと絶品グルメ
【アクセス】 ソウルの清凉里(チョンニャンニ)駅から「ムグンファ号」または「ITX-セマウル号」に乗ってヨンウォル駅まで約2時間〜2時間半です。車窓から見える江原道の山並みが旅の気分を盛り上げてくれます。現地では観光地が点在しているため、自治体が運営する「観光タクシー」を半日または1日貸し切るのが一番効率的です。 【グルメ】 ヨンウォル名物といえば「蕎麦(メミル)」です。ヨンウォル西部市場に立ち寄り、ピリ辛のキムチや豚肉を巻いた「メミルジョンビョン(蕎麦クレープ)」をぜひ味わってみてください。目の前で焼いてくれる熱々のジョンビョンは、旅の最高の思い出になるはずです。